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アトピー性皮膚炎と疾患モデル

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 ●食品機能研究ニューズ(07年12月号)

●2008年1月8日発行  (株)メルシャン クリンテック 受託試験部  【第25号】

 新年明けましておめでとうございます。いつも当社のメールマガジンを愛読していただき、ありがとうございます。遅くなりましたが、四半期毎にお届けしております「食品機能研究ニューズ(第25号)」をお送り致します。今回は、アレルギー疾患の中で増加の傾向を示していますアトピー性皮膚炎に関する最近の情報とダニ抗原を用いたアトピー性皮膚炎の疾患モデルの紹介です。
 今回の原稿作成は、当社と業務協力を行なっています株式会社ビオスタ(ラボ 〒650-0047神戸市中央区港島南町6丁目7番1号HI-DEC404、TEL 078-894-3113、FAX 078-894-3114、ホームページURL http://www.biostir.com)の高橋氏にお願いしました。このメールマガジンの情報が皆様方の食品開発のご参考になれば幸いです。


1. アトピー性皮膚炎概論

1.1 アトピー性皮膚炎とは

 アトピー性皮膚炎は、増悪と寛解を繰り返す掻痒を伴う湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くは気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴、既往歴を持ち、IgEを産生しやすい素因を有すると定義されております。1)
  アトピー性皮膚炎は激しい掻痒を伴うため、睡眠が妨げられて生活の質(QOL)を著しく損なうだけでなく、誘発される掻破行動によって皮膚バリアが傷害されて症状が増悪、それがさらに掻痒を誘発して悪循環を形成します。さらに、湿疹は顔面や頸部に好発することが多いため、社会生活に支障をきたす場合も多くある疾患です。

1.2 アトピー性皮膚炎の疫学

 平成12〜14年度厚生労働科学研究費補助金免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業の課題「アトピー性皮膚炎の患者数の実態および発症・悪化に及ぼす環境因子の調査に関する研究」によって行われた日本国のアトピー性皮膚炎の全国平均有症率は、4ヶ月児12.8 %、1歳半児9.8 %、3歳児13.2 %、小学校1年生 11.8 %、小学6年生10.6 %、大学1年生8.2 %でした。2)
 
従来、アトピー性皮膚炎は幼小児に発症し、成長に伴って寛解に至る疾患でしたが、近年では成人重症例を含む患者が増加しています。

2. アトピー性皮膚炎の原因と治療

2.1 アトピー性皮膚炎の診断基準、病態生理

 「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」で定められた診断基準は以下のとおりです。
 1.掻痒
 2.特徴的皮疹と分布
 3.慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)
1、2および3の項目をみたすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する。
と定められております。
また、診断の参考項目として
 ●家族歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)
 ●合併症(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎)
 ●毛孔一致性丘疹による鳥肌様皮膚
 ●血清IgE値の上昇
も同時に参考にされます。
また、病態生理の特徴として
 ●Th2細胞優位の炎症反応であるが、慢性期にはTh1細胞優位に移行することもある。
 ●病変部位ではリンパ球などの炎症細胞の浸潤
などが確認されます。

2.2 アトピー性皮膚炎の原因・悪化因子

 アトピー性皮膚炎の病態はいまだ完全には明らかにされてはいませんが、遺伝的要因を背景に様々な原因・悪化因子が加わって発症すると考えられています。アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005によると、原因・悪化因子として環境因子、発汗、細菌、真菌、接触抗原、ストレス、食物等があげられています。(図1)


図1 アトピー性皮膚炎の原因・悪化因子(文献 1)より引用)

2.3 アトピー性皮膚炎の治療

 現在におけるアトピー性皮膚炎の治療の本質は、痒みをコントロールし、いかに湿疹病変を制御するかにあります。アトピー素因の遺伝的感受性を治療の最終ターゲットとするのは理想ですが、未解明な点も多く、今後の課題です。従って、現状では正しい診断と重症度の評価が行われた上でEBM(evidence-based medicine)に基づいた治療が行われます。
 治療の基本としては、
 1)原因・悪化因子の検索と対策
 環境中のダニ、花粉、食物、細菌・真菌、汗、ストレスなどの原因・悪化因子の除去

 2)スキンケア(異常な皮膚機能の補正)
 アトピー性皮膚炎患者には皮膚水分保持能、バリア機能の低下等の皮膚機能異常が認められ皮膚炎発症および増悪に深くかかわることが知られています。
 毎日の入浴、シャワーで皮膚を清潔にし、保湿剤等での皮膚の保湿保護、爪を短く切るなどのスキンケアが重要です。

 3)薬物療法
 炎症の抑制のため、ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤等が用いられます。ステロイド外用剤は各種強度(ウイーク、マイルド、ストロング、ベリーストロング、ストロンゲスト)があり、皮膚炎重症度、皮疹部位と性状、年齢に応じて選択されます。必用に応じて抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬も使用されます。1)〜3)の3点とも治療には同等に重要です。3)


図2 アトピー性皮膚炎の治療(文献 4)より引用)

3. アトピー性皮膚炎の動物モデルと特長

3.1 動物モデルの有用性

 薬物の評価および新薬の開発には動物の病態モデルが重要な役割を果たします。また、アトピー性皮膚炎をターゲットとした漢方、機能性食品、化粧品の効能効果の確認、スクリーニング等にも病態モデルは非常に重要です。
 アトピー性皮膚炎の病態は複雑であり、上記で述べたような掻痒、特徴的な湿疹とその分布、慢性・反復性の経過の有無を基に他の皮膚疾患を除外することによって診断されます。また、原因・悪化因子による要因、遺伝的要因、高IgE値を示すなどの特徴もあります。したがって、実験動物を用いて病態モデルを作成する場合には、これらヒトのアトピー性皮膚炎の病態をいかに反映させるかが重要です。5)

3.2 「ビオスタAD」誘発アトピー性皮膚炎病態動物モデル

 1)「ビオスタAD」とは
 「ビオスタAD」
は株式会社ビオスタが塩野義製薬と共同で開発したコナヒョウヒダニの虫体成分を含有した軟膏です。「ビオスタAD」をNC/Ngaマウスの背部に塗布することにより、ヒトアトピー性皮膚炎に非常に近い病態モデルを作製することができます。

 2)「ビオスタAD」誘発アトピー性皮膚炎病態モデルの特長
 「ビオスタAD」
は自然により近い状態でアトピー性皮膚炎を誘発する病態モデルであり、以下の特長があります。
 ・人のアトピー性皮膚炎に症状が酷似している。
 ・痒みを伴う掻破行動が観察される。
 ・慢性の皮膚炎を発症し、誘発を中止しても症状が長期間維持されるため、治療薬等の評価に利用できる。
 ・皮膚炎発症までの期間が短く、発症率も高いため、短期間でマウスの無駄がなく試験が可能である。
 ・現在、治療薬として市販されている薬剤の効果が確認できる。
 これらのことから本モデルは抗アトピー性皮膚炎、そう痒抑制に対する医薬品、健康食品の評価に最適です。

 3)「ビオスタAD」によるアトピー性皮膚炎の誘発法
 誘発方法は、4 % SDSで皮膚のバリアを破壊後、NC/Ngaマウス背部および耳介部に「ビオスタAD」を週2回100 mg/mouse塗布します。約3週間(計6回)でアトピー性皮膚炎病態モデルが作製されます。

3.3 「ビオスタAD」誘発アトピー性皮膚炎病態動物モデルの所見、薬理効果

1)スコアおよび掻破
 「ビオスタAD」の誘発に伴い、皮膚炎重症度スコアの上昇が確認されました。
また、アトピー性皮膚炎の特徴である掻破回数の上昇も確認されました。(図3)
皮膚炎症状として、紅斑、丘疹、鱗屑、痂皮、苔癬化などのアトピー性皮膚炎症状が確認されました。(図4)


図 3 「ビオスタAD」誘発モデルにおける皮膚炎スコア推移と掻破回数


図4 「ビオスタAD」により誘発したマウス背部皮膚炎

2)病理組織
 
無処理マウスおよび「ビオスタAD」誘発アトピー性皮膚炎の患部組織切片を観察した結果、表皮の肥厚、表皮突起の形成、 角質増生が確認されました。さらに、炎症性細胞(肥満細胞、好酸球)の浸潤、また肥満細胞の総数、脱顆粒数の有意な上昇が確認されました。(図5)


図 5  「ビオスタAD」誘発モデルの皮膚病理組織像

3)IgEおよびサイトカイン
 正常マウス(ノーマル)、バリア破壊と軟膏基剤のみを塗布した群および「ビオスタAD」塗布して皮膚炎を誘発した群の血清総IgE値およびサイトカイン産生を測定しました。その結果、IgE値の有意な上昇が確認されました。(図6)


図 6 「ビオスタAD」誘発モデルの血清総IgE

 また、アトピー性皮膚炎急性期に確認されるTh2サイトカインであるIL-5 IL-13、慢性期に確認されるTh1サイトカインであるIFN-γの有意な産生が確認されました。


図7 「ビオスタAD」誘発モデルにおけるサイトカイン産生(文献 6)より引用)

4)薬理評価
 「ビオスタAD」誘発アトピー性皮膚炎病態動物モデルを使用して、ヒトアトピー性皮膚炎の既存薬であるステロイド軟膏、タクロリムス軟膏の薬効を確認することができました。


図 8 「ビオスタAD」誘発モデルによる既存薬の薬理効果(文献 6)より引用)

4. まとめ

 アトピー性皮膚炎は患者数も多く、また、本疾病関連商品は電気製品、衣料、一般雑貨、化粧品、健康食品等多分野にわたっています。しかし、本疾患に関しては原因、メカニズム等不明な点が多く、関連商品の開発にあたっては適切な動物実験が求められています。すなわち、ヒトのアトピー性皮膚炎の病態を動物モデルにいかに反映させるかが重要です。「ビオスタAD」誘発アトピー性皮膚炎モデルは、ヒトアトピー性皮膚炎に非常に近い疾患モデルと考えられます。
 本モデルを使用することにより、抗アトピー性皮膚炎医薬品や機能性食品の評価、スクリーニングを効率的に行うことができると考えられます。

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5. 参考文献

1)河野陽一、山本昇壯、ほか:平成8年度厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー総合研究および平成9-16年度厚生労働科学研究、アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005. 1-15、 2005.

2)山本昇壯: アトピー性皮膚炎の疫学から−有症率および発症・悪化因子を中心に−、 小児科、 45: 1669-1678、 2004.

3)古川福実: アトピー性皮膚炎治療薬のEBM、 アレルギーの臨床、 26: 670、 2006.

4)早川律子: アトピー性皮膚炎の環境整備、 臨床と研究、 81: 403-406、 2004.

5)稲垣直樹、永井博弌: アトピー性皮膚炎治療薬の薬効評価、 日薬理誌、 127: 109-115、 2006.

6)Yamamoto M、 et al: A Novel Atopic Dermatitis Model Induced by Topical Application with Dermatophagoides Farinae Extract in NC/Nga Mice. Allergology International 、 56: 139-148、 2007.


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