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医薬品製造施設などのクリーンルーム

■クリーンルームの清浄度規格

2010年1月現在のものでそれ以降の規格の変更があることをご理解ください

 クリーンルームには、半導体製造などを対象としたインダストリアルクリーンルーム(ICR)と微生物制御を含むバイオロジカルクリーンルーム(BCR)の2種類かあります。一般的なクリーンルームの清浄度に関する規格と、特に無菌医薬品製造におけるクリーンルームの清浄度(微粒子・微生物)の規格を整理してみます。医薬品・食品製造施設のクリーンルームもこれらの規格に適合する形で、設計、施工、管理されています。

1. 米国連邦規格/FED-STD-209E

 この規格は、原題を『制御された環境としてのクリーンルームとクリーンベンチについて』といい、ICRの規格としては、最も有名で、我が国でも長年使用されてきたものです。これは米国のFederal Standard209(FED-STD-209)といい1963年に制定されました。1立方フィート(以下ft3と記す)あたりの最大許容粒子数で表記します。FED-STDでクラス-1(0.5μm)とは、1ft3の中に、0.5μmの粒子が1個あることを意味します。1feet=0.3048m、1ft3=28.3リットルです。
 以後、209C,同D,同E(1992年にメートル法(IS単位)を優先し、英国単位(ft)を併記しました)(表-1)と改訂されてきましたが、ISO規格「ISO14644」の制定により2001年11月に廃止されましたがいまでも慣習的に使用されており、特に太字の英国単位100、1,000、10,000、100,000のクラスは米国cGMP規格のクラス表示に利用されています。

表-1  FED-STD-209E
クラス クラス上限値
0.1μm 0.2μm 0.3μm 0.5μm 5μm
単位体積 単位体積 単位体積 単位体積 単位体積
メートル法 英国単位 m3 ft3 m3 ft3 m3 ft3 m3 ft3 m3 ft3
M1
-
350 9.91 75.7 2.14 30.9 0.875
10.0
0.283
-
-
M1.5 1 1,240 35.0 265 7.50 106 3.00
35.3
1
-
-
M2.
-
3,500 99.1 757 21.4 309 8.75
100
2.83
-
-
M2.5 10 12,400 350.0 2,650 75.0 1,060 30.0
353
10.0
-
-
M3
-
35,000 991.0 7,570 214 3,090 87.5
1,000
28.3
-
-
M3.5 100
-
-
26,500 750 10,600 300
3,530
100
-
-
M4
-
-
-
75,700 2,140 30,900 875
10,000
283
-
-
M4.5 1,000
-
-
-
-
-
-
35,300
1,000
247 7.00
M5
-
-
-
-
-
-
-
100,000
2,830
618 17.5
M5.5 10,000
-
-
-
-
-
-
353,000
10,000
2,470 70.0
M6
-
-
-
-
-
-
-
1,000,000
28,300
6,180 175
M6.5 100,000
-
-
-
-
-
-
3,530,000
100,000
24,700 700
M7
-
-
-
-
-
-
-
10,000,000
283,000
61,800 1,750

2. 日本工業規格/JISB9920

 この規格は、1975年に制定されました。『クリーンルームの空気清浄度の評価方法』といい、FS209Dを参考として、FED-STDとの整合性を保ちながらSI単位表記とし、さらに下記に述べるISO14644-1「空気清浄度クラス」のISO基準が1999年に制定されたのをもとに2002年に改正されました (表-2)。

3. ISO規格/ISO14644

 ISO14644-1「空気清浄度クラス」が1999年及びISO14644-2「清浄度クラスを維持するためのテストとモニタリング」のISO基準が2000年に制定されました(表-2)。これらの基準をもとに、上のJISB9920が2002年に見直され同等の規格となりました。

表-2 JIS B 9920:2002 清浄度およびISO14644-1 清浄度クラスの上限濃度(個/m3
粒径 清浄度クラス
(μm) クラス1 クラス2 クラス3 クラス4 クラス5 クラス6 クラス7 クラス8 クラス9
0.1 10 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 - - -
0.2 2 24 237 2,370 23,700 237,000 - - -
0.3 - 10 102 1,020 10,200 102,000 - - -
0.5 - 4 35 352 3,520 35,200 352,000 3,520,000 35,200,000
1.0 - - 8 83 832 8,320 83,200 832,000 8,320,000
5.0 - - - - 29 293 2,930 29,300 293,000
粒径範囲 0.1〜0.2 0.1〜0.5 0.1〜1.0 0.1〜5.0 0.5〜5.0

FED 209E
との関係

- - クラス
1
クラス
10
クラス
100
クラス
1,000
クラス
10,000
クラス
100,000
-
 JISは当然ながらISOと整合しますが、FED-STD-209Eとは対象粒径が異なるため同じ清浄度であってもクラスの数値が異なります。例を挙げると、FED-STD-209E(英国単位)でクラス100と言う場合0.5μm以上の粒子が1ft3あたり100個、1m3あたり3,520個までであり、これをJISやISOではクラス5と言うがこの5というのはベキ数を表し、105いう意味で0.1μm以上の粒子が1m3あたり100,000個までを意味します。ISOでは0.2μmなら23,700個まで、0.3μmなら10,200個まで、0.5μmなら3,520個までです。ISOでは0.1μmを基準として採用されました。すなわち、ISOでクラス5というと0.1μm粒子が100,000個以下のクリーンルーム規格を意味します。

4. 三極GMP規格

 医薬品の製造におけるGMP規格では製造中の環境を評価することが重要と考え作業時、非作業時の浮遊塵埃数を規格に定めるようになりました。これは1997年EU-GMP補足ガイドラインにて定められました。ただし、無菌医薬品の製造において定めたものであり、クリーンルーム全体の対象ではありません。無菌医薬品製造区域の空気清浄度に関しては、主なものとしてはWHO-GMP、米国cGMP、USPおよびEU-GMP、J-GMP(日本)があります。EU-GMPは2008年に見直され、2009年3月に新たな規格に改正されました。(表-3)。

表-3 EU-GMP Annex 1 改訂版規格表
  非作業中 作業中
グレード 最大許容微粒子数/m3
0.5μm
最大許容微粒子数/m3
5μm
最大許容微粒子数/m3
0.5μm
最大許容微粒子数/m3
5μm
A 3,520以下 20以下 3,520以下 20以下
B 3,520以下 29以下 352,000以下 2,900以下
C 352,000以下 2,900以下 3,520,000以下 29,000以下
D 3,520,000以下 29,000以下 規定せず 規定せず
  作業中のクリーンルームの微生物学的モニタリングの推奨基準
  浮遊微生物 落下菌 付着菌 付着菌
グレード CFU/m3 CFU/90mmΦ,4hrs CFU/55mmプレート CFU/5本手袋
A 1未満 1未満 1未満 1未満
B 10以下 5以下 5以下 5以下
C 100以下 50以下 25以下 -
D 200以下 100以下 50以下 -

 2003年EU-GMP Annex 1改訂版によりグレードAは開放系のクリーンルーム(層流)と閉鎖系のアイソレータやグローブボックス(一方向流)と定義されました。また、最初のEU-GMPでは、5μmの最大許容微粒子数は0個と規定されていましたが、2003年EU-GMP Annex1改訂版により、制限値が1に設定されましたが、粒子測定器の電子ノイズなどによる誤差も考慮に入れるべきとのことで、2009年3月に改正されました。
 米国では、FDAから2004年9月に無菌操作法で製造される無菌医薬品のGMPガイダンス(Guidance for IndustrySterile Drug Products Produced by Aseptic ProcessingCurrent Good Manufacturing PracticeSeptember 2004Food and Drug Administration)が微生物規格を含め出ています。EU-GMPと異なる点は、非作業中(at rest)の概念がなく、粒子数、微生物数はすべて作業時の数字であることです。また、EU-GMPには規格として定義していないクラス1,000の規定があります(表-4)。

表-4 Air Classification cGMP規格
Clean Area Classification
(0.5μm/ft3)
ISO Designation 0.5μm以上の
粒子数/m3
浮遊微生物 
Active Air Action
(cfu/m3)
落下微生物 
直径(90mm;cfu/4hours)
100 5 3,520 1 1
1,000 6 35,200 7 3
10,000 7 352,000 10 5
100,000 8 3,520,000 100 50
 落下微生物はオプション的な役割であり、あくまでもエアーサンプラーによる浮遊微生物をモニタリングします。また、USP<1116> Microbiological Evaluation of Clean Rooms and Other Controlled Environmentsでは、cGMPと同じような規格となっていますが、クラス1000の規格はありません。
  一方、日本薬局方では、無菌医薬品製造区域の空気清浄度の規格は、EU-GMPとほぼ一致しており、表-5のようになっています。

表-5 無菌医薬品製造のための空気の清浄度と微生物評価基準(日本薬局方)
空気の清浄度
レベル
グレード
最大許容微粒子数 空中
微生物数
(CFU/m3
最小空気
採取量
(m3)
表面付着微生物数
非作業時
0.5μm以上
作業時
0.5μm以上
機器・設備
(CFU/24〜30cm2
手袋
(CFU/24〜30cm2
5指をプレートに押す
A
(層流作業区域)
3,530 3,530 <1 0.5 <1 <1
B
(非層流作業区域)
3,530 353,000 10 0.5 5 5
C 353,000 3,530,000 100 0.2 25
D 3,530,000 200 0.2 50
 また、WHOでは現在、WHO-GMPのChapter3:specific pharmaceutical products(2004)において無菌製剤などの医薬品製造におけるクリーンルーム規格が定められましたが、ほぼEU-GMPと類似した規格となっています。異なる点は、グレードAで微生物数が3未満とゆるくなっています。(表-6)

表-6 WHO-GMP規格表
  非作業中(at rest) 作業中(in operation)
グレード 最大許容微粒子数/m3
0.5μm
最大許容微粒子数/m3
5μm
最大許容微粒子数/m3
0.5μm
最大許容微粒子数/m3
5μm
A 3,500以下 0 3,500以下 0
B 3,500以下 0 350,000以下 2,000以下
C 350,000以下 2,000以下 3,500,000以下 20,000以下
D 3,500,000以下 20,000以下 規定せず 規定せず
  作業中のクリーンルームの微生物学的モニタリングの推奨基準
  浮遊微生物 落下菌 付着菌 付着菌
グレード CFU/m3 CFU/90mmΦ,4hrs CFU/55mmプレート CFU/5本 手袋
A 3未満 3未満 3未満 3未満
B 10以下 5以下 5以下 5以下
C 100以下 50以下 25以下 -
D 200以下 100以下 50以下 -

 以上記載したこれらの規格も、順次改定されていくので最新の情報を得なければなりません。また、日欧米三極の新医薬品の承認審査資料関連規則の整合化を図ることによる承認審査の迅速化などを目的として設立されたICH (International Conference on Harmonization of Technical Requirments for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)の活動により、かつては各国の規格がかなり異なっていたが最近ではかなり近寄ってきています。
 ここで、もう一度、各国の規格の比較を塵埃数、クラス(グレード)表示、区域名称から表-7に整理してみます。

表-7 ISO14644-1 をもとにした各国の洗浄度基準とグレード表示比較
ISO14644-1 0.5μm以上
の粒子

FED-STD-209
cGMP作業中

JP
EU-GMP
非作業中

JP
EU-GMP
作業中

ISO13408-1
ヘルスケアの無菌処理

日本版無菌医薬品の製造指針
Class 5 3,520 Class 100 GradeA,B GradeA Critical processing zones 重要区域
Class 6 35,200 Class 1,000 -      
Class 7 352,000 Class 10,000 GradeC GradeB Other processing zones 直接支援区域
Class 8 3,520,000 Class 100,000 GradeD GradeC Support areas outside the APA 支援区域

 これらの相互の関係は、JP,EU-GMPガイドでは、「非作業時」と「作業時」が規定され、「非作業時」の状態における微粒子の最大許容数は、米国連邦標準規格209EおよびISOの分類による規格と、グレードAおよびBでは、クラス100、M3.5およびISO5に、グレードCでは、クラス10,000、M5.5およびISO7に、また、グレードDでは、クラス100,000、M6.5およびISO8にそれぞれ相当します。一方、「作業時」の微粒子の最大許容数については、EU-GMPガイドでは、グレードAでは、クラス100、M3.5に、グレードBは、クラス10,000、M5.5に、また、グレードCでは、クラス100,000、M6.5にそれぞれ相当します。グレードDは対応する規格はありません。ISO13408-1ヘルスケアの無菌処理において、今まで清浄度のグレードで表示していたのを、製品品質に影響度が高いゾーンということで、重要操作区域(ゾーン)や支援区域(エリア)という表現が新たに出てきました。
今まで出てきた規格の記号を整理します。

工業的規格では
ISO: International Organization for Standardization
JIS: Japanese Standards Association
FED-STD(FS): Federal Standard

医薬品製造の分野では
WHO-GMP: World Health Organization Good Manufacturing Practice
USP: The United States Pharmacopoeia
cGMP: (FDA)current Good Manufacturing Practice
EU-GMP: European Pharmacopoeia Good Manufacturing Practice
JP:Japanese Pharmacopoeia

などがあります。クリーンルームの製造業者は工業的規格をもとに設計施工しますが、無菌医薬品製造においては、クリーンルーム施工業者及び医薬品製造技術者は三極GMPやUSP,JPをもとにバリデーション及び施設の清浄度管理を行ないます。立場により求める規格が異なっているので注意しなければいけません。
  私どものクリーンアップ作業は、クリーンアップ後の微生物学的環境レベルが、GMPや日本薬局法で定められた基準値に適合しているからいいということだけではなく、お客さまの施設の通常クリーンレベルもしくは通常維持管理レベルを上回るクリーン度を実現していくことが重要であると認識しております。

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